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19話 繋がれた手と、夕暮れの約束

Author: みみっく
last update Huling Na-update: 2025-10-05 06:00:56

 悠真は、驚いてひよりを見た。彼女は、顔を真っ赤にして俯き、掴んだ手に、ぎゅっと力を込めている。その指先は、小刻みに震えていた。

「あの……その、人、多いから……はぐれないように、ね?」

 ひよりの声は、か細く、ほとんど聞き取れないほどだったが、その言葉には、純粋な優しさと、そして確かな勇気が込められていた。繋がれた手のひらから、ひよりの体温がじんわりと伝わってくる。その温かさに、悠真の胸は高鳴り、全身に甘い電流が走った。彼の股間は、既に熱を帯び始めていたが、それは決して嫌な熱ではなく、ひよりへの愛情と、彼女の勇気に対する深い喜びの熱だった。悠真は、彼女の小さな手を、優しく握り返した。ひよりの指が、彼の指に絡みつく。

♢夕暮れの公園と唇の約束

 夕方になり、二人は海が見える小さな公園へとやってきた。公園のベンチに並んで座り、オレンジ色に染まる空を眺める。海からの風が、ひよりの髪をそっと揺らし、彼女の甘い香りが、悠真の心を穏やかに満たしていく。繋がれた手は、離れることなく、二人の間に確かな絆を感じさせた。

「今日、すごく楽しかったね、悠真くん」

 ひよりが、夕焼けに染まった瞳で、悠真を見上げた。その瞳は、優しく、そして愛情に満ちていた。悠真の心臓は、激しく脈打つ。この瞬間が、永遠に続けばいい。

「ああ、俺も。ひよりと一緒だと、どこに行っても楽しいな」

 悠真は、繋いだ手をさらに強く握りしめた。ひよりの頬が、夕焼けの色とは違う赤に染まっていく。二人の間に流れる空気は、甘く、そして温かかった。

 悠真は、ゆっくりとひよりの顔に近づいた。彼女の大きな瞳が、彼の動きに合わせて、わずかに見開かれる。ひよりは、目を閉じることも、悠真を拒むこともせず、ただ静かに彼の接近を受け入れているようだった。彼の視線は、ひよりの少し開いた、柔らかな唇に吸い寄せられる。

 あと、もう少し。悠真の唇が、ひよりの唇に触れる直前、ひよりの震える手が、悠真の胸元にそっと触れた。

「ちょ、ちょっと、まだ早いかな……」

 ひよりの声は、蚊の鳴くようにか細く、恥ずかしそうに俯いた。彼女の顔は、耳まで真っ赤に染まっている。

「もっと、時間を掛けて……ね? 心の準備とか……あるし……」

 ひよりは、俯いたまま、繋いだ手をぎゅっと握りしめた。その言葉と仕草には、純真な彼女なりの精一杯の勇気と、そして悠真への深い思いが込められていた。

 悠真は、ひよりの言葉を聞いて、胸の奥が温かくなるのを感じた。確かに、今すぐ彼女の全てが欲しいという衝動は抑えきれないほど強い。だが、彼女の「時間をかけて」という言葉は、彼にとって「今はまだ」という意味ではなく、「これから先もずっと、君と一緒にいる」という、未来への希望に満ちた約束のように響いたのだ。

「ああ、分かった。ごめん、焦らせて……」

 悠真は、ひよりの小さな体を、優しく抱きしめた。彼女の柔らかな温もりが、彼の全身を包み込む。ひよりの顔が、彼の胸元に埋められる。彼女の甘い香りが、悠真の鼻腔を充たし、彼の心は満たされていった。

 悠真は、ひよりの頭を優しく撫で、彼女の額にそっとキスを落とした。彼女が拒んだのは、唇のキスだけだ。この温かい抱擁と、額へのキスだけでも、悠真にとっては十分すぎるほどの進展だった。彼の心には、ひよりへの深い愛情と、これからの二人の未来への確かな喜びが満ち溢れていた。

♢夜空の下、繋がる声

 街に、夏の夜が訪れた。悠真は、自室のベッドに横になり、今日のデートの余韻に浸っていた。ひよりの柔らかい手、夕焼けに染まる公園、そして、彼の胸に埋められた彼女の温もり。どれもが、鮮やかに心に焼き付いている。股間には、まだじんわりとした熱が残っていた。

 その時、スマートフォンの画面が光った。表示された『澄川ひより』の文字に、悠真の心臓が大きく跳ねる。数回のコール音の後、彼女の柔らかな声が耳に届いた。

「もしもし?」

 声が、わずかに弾む。数回のコール音の後、電話の向こうから、ひよりの少し上気した、甘い声が聞こえてきた。

「悠真くん! こんばんは!」

「ひより! こんばんは」

 二人の声が、夜空の下で繋がる。ひよりの声は、今日のデートの楽しさをそのまま形にしたかのように、弾んでいた。

「今日は本当に、ありがとうね!すっごく楽しかったよ!」

 ひよりの感謝の言葉に、悠真の胸は温かくなる。

「いや、俺も楽しかったよ。ひよりが楽しそうで、よかった」

「うん! 雑貨屋さんとか、カフェとか、どれも私が行きたかったところばっかりで!パンケーキも、すっごく美味しかったねー!」

 ひよりが、くすくすと楽しそうに笑う声が聞こえる。その笑い声は、まるで鈴の音のように軽やかで、悠真の心を優しく撫でた。彼の脳裏には、フォークを差し出してくれたひよりの可愛い仕草が蘇り、思わず顔が緩む。

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